ボーダレス化がもたらす国際競争
前回触れた空前のインポートブームは何もファッションの分野だけではないことは明らかである。今やタバコや缶ビールなどは海外製品と国内製品がほとんど同じプライスで同列に並べられて売られているのを見ると、すでにアパレル製品もよそ事ではないのである。こういった現象は日本が貿易自由化の枠を拡大してきた結果であるが、アパレル産業は海外のファッション圏にのみ情報をもとめ、内需中心にやってきたため、こういったことに不干渉で流通の国際的な驚異をあまり感じていなかった。

今まさにその付けが回ってきたのである。いずれ1992年のEC統合(本論文は昭和54年のものです)によって、この傾向はますます強くなる。なぜなら、海外企業の現地法人が乱立し、NIES、ASEAN諸国の生産基地を背景にしたリーズナブルで好感度の商品が大量に輸入されてくるからだ。おそらくそれらはボリュームゾーンにまで広がり、消費者がタバコや缶ビールのようにそれぞれの気分や嗜好にあわせて自由にチョイスできる時代がそこまで着ている。

時代背景やマーケットの急速な変化に遅れをとった日本のアパレルビジネスは、90年代後半から増え続けるニューエイジ(年齢だけでなく意識も込めた人たち)といわれる自然科学、哲学、アート、音楽など様々な分野をバックに「ニュールネッサンス・ウエーブ」の新芸術運動と重なり、大きな流れを創って行く人たちのニーズに応えることができるのか?根底から価値観の違うこの世界的ビッグマーケットを新たなビジネスチャンスとしてとらえなければ衰退の道程をたどることになる。しかし今なら間に合うかもしれない。

今からでも遅くはない。経営スタンスの見直しから始まって人事、創造性、業務の新合理化(ここでいう新の意味とは一線を画す)など、すべての部分をそれぞれのポジションで見直すことである。

ファッションビジネスの蓄積してきた独自のソフト・ノウハウをもって他の付加価値産業とジョイントし、十分な活性亜Kをはかることができればかなりのビジネススケールが広がり、当然の結果として大きなビジネスチャンスもうまれる。ファッションの「遊・休・知」をキーワードに都市計画、地域開発などを通して活性化が望まれる、ジョイントの可能性のある先としては、ファッション関連産業はもちろんのこと、ウオーターフロント計画を中心としたリゾート計画、スポーツを中心としたレジャー産業、郊外ニュータウンの広大なショッピングモール計画、その他の公共、医療、教育機関、駅などのターミナルやパブリックスペースなどモノと環境スペースとの融合が益々促進化され、新業態の開発、異業種混合の流通チャネルなど、そのニーズは高まるのは必至である。このように未来的に明るい環境が整備されつつある状況を捉えてもファッションビジネスのかつやくする場は多大である。

前述した「ファッション産業と異業種との交流関係」を考えても理解できるように、益々進むであろうボーダレス社会の中で、国際的見も感性(完成)度の高い世界戦略商品の開発及び展開プロジェクトが考えられる。その一例として、まずラテン(感覚的)とゲルマン(精密的)の混血人種による商品開発グループを作る。それによって、ソフトとハードのグッドバランスな商品が開発される。そして、生産技術の優秀なプロダクトチームとして日本を中心としたNIESグループ、そしてフィニッシュされたその商品を多国籍に向けてPR、マネージメント及びセールスを得意とするアメリカを中心としたマーケティンググループ。

このように各国の歴史的背景、文化、人種の特徴や特色を生かしたワールドワイドな戦略商品の展開も可能となり、ファッションに限らず今後異業種においてもファッションビジネスのノウハウを応用した十分なる可能性が感じられるのである。

もし、こうした傾向が進めばアパレルビジネスを取り巻く産業構造や環境の変化、改革、再編成が次々とおこるだろう。アパレルビジネスのイメージとしてもっと早期に取り入れるべきだった経営ポイントを思い浮かべると、次のような事柄が挙げあれるのではないか?

1.高度な人材育成、外国人スタッフなどの導入による人的レベルアップ

2.オフィス環境の整備充実、ソフト面のOA化、システム化の導入

3.国際的な商品開発システムと生産基地のネットワーク化、ワールドワイドなブランド戦略、ハイテク技術の導入

4.文化・アート分野とのジョイント

5.株式公開による上場・資金導入

以上の5点である